ダ・カーポⅡ外伝~TIME WILL SHINE~

エピローグ

白色と灰色の季節が終わり、薄緑色と桜色の季節がやってきました。
僕は桜色に一色の世界へと様変わりした桜公園にいます。公園に桜が咲くようになってから、ほぼ毎日通っています。何故、そこまで通うのかは僕自身もよく分からなかったりします。強いて理由をあげるのなら、桜が綺麗で見飽きないということになるでしょうか。あとは何となく居心地がいいというのもあります。春の陽気のせいもありますが、確かに散歩するにはちょうどいいです。
僕は今日も公園内を適度に散歩していました。飽きないようにと自分で歩くコースを変えたりとかもありましたが、もうパターンが出尽くしたため、初めに来たときと同じコースを歩きました。
ちょうど自動販売機のある広場に入ったところで、僕は予想していなかったひとたちに出会いました。麻耶お姉ちゃんと麻衣お母さんです。ふたりはベンチに腰掛けていて、お姉ちゃんが僕の姿に気づき、立ち上がって手を軽く振りました。
僕は小走りでベンチに向かいました。
「あれっ、どうしてお姉ちゃんとお母さんが公園にいるの?」
「お母さんが久しぶりに桜公園まで散歩したいと言ったから、一緒に散歩していたの。そういえば、勇斗はよくここに来ているのよね?」
「うん、ほとんど毎日来ているよ」
「ふーん、そうなんだ。家に引きこもっているよりは、そっちのほうが健康的でいいわね」
お姉ちゃんは満足げな目で僕を見ました。
「それなら、ここから先は勇斗に案内してもらいましょうか」
とお母さんが言いました。
「分かった。まかせてよ」
僕は力強く答えました。頼りにされてちょっと嬉しかったりします。
僕たちは三人で公園を歩くことになりました。
「こうして家族で歩くのって久しぶりよね」
「そうね。もう何年もなかったんじゃないかしら。こういう素晴らしい機会を与えてくれた神様に感謝しないといけないわね」
お姉ちゃんの言葉にお母さんが穏やかな微笑みを浮かべました。僕たちのいる場所が和やかな空気に包まれました。すごく好きな空気です。
しばらく歩いているうちに、僕たちは公園の中心部にある『枯れない桜』と呼ばれている桜の木の前にやって来ました。
「ちょっと待ってて」
僕は桜の木のそばに寄ると、その太い幹に額を当てました。
「ありがとう」
そして、自然とわき上がる深い感謝とともにお礼の言葉を告げました。
「何で桜の木にお礼なんか言ってるの?」
お姉ちゃんが目を丸くして尋ねてきました。それはもっともなことだと思います。
「ん、なんとなくだよ。なんとなくお礼を言いたかったの」
「何なの、それ。おかしな勇斗」
お姉ちゃんは肩をすくめました。
「僕もそう思うよ。でも、どうしてか分からないけど、この桜を見るとそんな気持ちになるんだ」
それに対し、僕は軽く笑って桜を見上げました。
無数の桜の花びらが僕を優しく包み込むように舞い落ちます。僕は温かさと優しさを一身に受けながら今の幸せをかみしめました。